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【総論】だれが音頭を取ると現場は回るのか

小児気道チームのカンファレンス
FIELD NOTE 02
聖マリアンナ・モデル
チームを動かす「交通整理」と、組織を横断するつなぎ役
座談会参加者

6 PROFESSIONALS

小森 学 医師
耳鼻咽喉科学 主任教授

大林 樹真 医師
外科学小児外科 講師/診療副部長

海賀 千波 医師
小児科学 助教

小町 詩織 医師
新生児科(小児科)講師

坂本 三樹 医師
麻酔科学 教授

倉光 真登香 NP
診療看護師技術部 小児外科出向

小児気道チームのカンファレンス
聖マリアンナ医科大学病院「気道チーム」座談会
「聖マリアンナ・モデル」座談会第2回となる今回は、小児気道管理チームの総論として、聖マリアンナ医科大学病院の6名のエキスパート――小森 学 医師(耳鼻咽喉科学主任教授)、坂本 三樹 医師(麻酔科学教授)、大林 樹真 医師(外科学小児外科講師/診療副部長)、海賀 千波 医師(小児科学助教)、小町 詩織 医師(新生児科(小児科)講師)、倉光 真登香NP (小児外科診療看護師)――に伺います。テーマは。多くの現場で連携がうまくいかない本領域で、なぜここでは「うまくいく」のか。その構造を整理します。
01
目次

小児重症医療は、そもそも「多診療科型」医療

小児の重症領域は、単科完結型の医療ではありません。呼吸・循環管理ひとつとっても外科、内科、麻酔、新生児、看護――複数の専門性が同時に必要になります。医療は高度で専門性が必要な領域ほど各職種の守備範囲は狭くなります。小児であればこの傾向はさらに大きくなります。

「これはこの人、これはこの人」と分業が進むと「すき間」ができやすくなる。それが重症小児領域と言えます。そのため、他科・他職種との連携の質が診療の質を規定します。このような重症小児対応を、小児専門病院ではない大学病院で行う構造上の難しさについて、倉光 真登香(小児外科診療看護師)はこう表現します。

「大学病院での小児対応は、小児の専門病院と違ってガラパゴス化しがちです。また病院全体における比重(編集部注:症例数、かけられる時間、予算など)が成人と比べて少ない。小児医療の専門家だけじゃない医療従事者でチームを作るのは、本来とても難しいことだと思います」(倉光NP)

02

カンファレンスの多さは、この領域の性格そのもの

小森学医師
小森学医師

聖マリアンナ医科大学病院(以下、同院)の気道チームには、頻繁にカンファレンスが開かれる文化があります。坂本 三樹 医師(麻酔科)は、麻酔科医局に多科が集まり症例検討する場を長年続けてきました。

「この症例どうしましょう、と必要時、重症例を検討するカンファです。こうした機会を作っていろんな人を引き込むことが一番重要なのかなと思って続けています」(坂本医師)

小森 学 医師(耳鼻咽喉科)は、カンファレンスに対してまず、小児医療の文化と表現します。

「小児病院や小児科は、基本カンファレンスが好きですよね(笑)。他科の医師や大学病院のスタッフにとっては『多いな』って感じるんじゃないかと思います」(小森医師)

カンファレンスが重視されてきた背景として、専門性が分化されていることに加え、一つの症例に対して十分な経験と多角的な知見を持つ医療者が少ないことも考えられます。

小児重症領域は成人に比較して個別多様性が大きいうえ、月齢・年齢でも症状と対応の開きが大きい領域です。さらに、成人ICU患者は年間20万人に対してPICU(小児集中治療室)の患者数は年間1−2万人と言われます。このため、症例を複数の目で見ることが判断の質を支える標準的な方法として機能してきたという見方もあります。カンファは、リソース制約に対する実践的な適応として用いられてきました。海賀 千波 医師(小児科)も、前職の経験からカンファレンスの重要性を述べます。

「前任の大学では、たしかに、カンファレンスは少なかったですね。ですので困った症例をいろんな科の先生がいる中で提示して相談する場が少なかった。そもそも気切(気管切開)誰がやる?といった話し合いが必要なのにこまるような経験をしてきました。」(海賀医師)

カンファがないということは、困った症例を持ち寄る場そのものが存在しないということです。海賀医師にとって、聖マリアンナに来て衝撃だったのは、ここでした。

03

多職種連携が機能するための「交通整理」

大林樹真医師
大林樹真医師

多職種連携が前提だとしても、集まった医療者が自然に噛み合うわけではありません。ここで機能するのが「交通整理」です。気道チームで「音頭をとるのは小森先生」とメンバーが口をそろえる、その小森医師が行っているのがこの交通整理です。

「僕は、音頭を取ってるというよりは交通整理をしてるだけなんです。流れを見て、あまり出しゃばらないように心がけています。例えば当院では基本的に外切開(編集部注:体の表面を直接切開する)は小児外科なので気切も小児外科にお任せしてっていう方がスムーズかなと思って、そういう流れになるように進めます」(小森医師)

耳鼻咽喉科の主任教授という立場でありながら自身が「あまり出しゃばろうとせず」、役割を流れに沿って整えていく「交通整理」。大林 樹真 医師(小児外科)は連携の構造をさらに以下のように分析します。

「音頭を取るのは小森先生、そのもとでそれぞれのグループで患者に対する意識を持ちながら音頭を取る人がそれぞれ機能しているように思います」(大林医師)

交通整理をする1人と、各診療科・各職種の中で患者を主語にして音頭をとるスタッフたち――この二層構造が、聖マリアンナ・モデルの骨格と言えます。

04

組織や病棟を横断する「つなぎ役」

倉光真登香NP
倉光真登香NP

重症小児対応の連携は医師間だけではありません。例えば治療介入の時期や方法を決めるとき、医学的妥当性だけでなく社会背景・家族のQOL・在宅準備状況までを総合的に検討することが大切です。気道手術であれば、本人だけでなく家族の生活を一変させる治療でもあります。その事実を退院後の生活まで見据えて設計に組み込んでいく。そのために、外来と入院や部署間、入退院前後の生活背景まで含めた情報連携や調整を横断的に担うのが倉光NPです。

「患者さんはPICUも小児科もNICUも行き来します。外来も手術室も病棟も行き来します。このままだとスタッフも情報も分断されがちなので、つないでいくのが私の役目と思っています」(倉光NP)

つなぎ役は小町 詩織 医師(新生児科)と分担して行われることも。相談しながら有機的に進めています。

「この横断的な調整の重要性、NPの役割の大切さを本当に実感しています」(小町医師)

つなぎ役における複数が並走する構造にも、カンファレンス同様の判断の質を守る意味があるのではないでしょうか。

05

「マイナー科が主導する」という視点

聖マリアンナ・モデルには、もうひとつ特徴があります。チームの音頭を取るのは、耳鼻咽喉科――成人科の上、相対的に「マイナー科」に位置します。大林医師は、この構造の意味をこう位置づけます。

「本来成人科の先生が主体性を持って加わってくれてるっていうところこそが、小児病院ではない当院でチームがうまくいっている理由の一つかとも思います」(大林医師)

小児のサブスペシャリティが確立していない領域では「専門医」を待っていても現場は動きません。誰かが手を挙げて動き出す――その動きの起点が、必ずしも小児系の診療科である必要はないという聖マリアンナ・モデルの示唆がここにあります。そのうえで、「なんとか、どうにかできる体制を広めて、なんとかできる子は何とかしたい・していけるモデルを作りたいなと思ってます」(小森医師)こうした小森医師のパッションにリーダーシップ構造の必然性が見られました。

06

「だれが音頭を取ると現場は回るのか」

――この問いに、聖マリアンナ・モデルはあるヒントを示します。多職種連携が前提の領域では、カンファレンスの文化と交通整理の役割、そして各部門で患者を主語にできる人の存在がチームを動かします。音頭を取る診療科は必ずしも「主流」である必要はなく、動ける人が動く。それを支えるのは意識的な仕組みの設計です。次回は、この連携が具体的にどのような判断を生んでいるのか――「保存的治療から外科的治療へ、いつ切り替えるのか」という判断のポイントを、喉頭軟化症を中心にお届けします。【次回予告】第3回【判断のポイント】「いつ」外科的治療にしていくか?――喉頭軟化症からみる判断の実際第4回【育成・成長】

聖マリアンナ・モデル
VOL. 01
多職種連携の構造

VOL. 02
だれが音頭を取るか

VOL. 03
外科治療への切り替え

VOL. 04
診療科を超えた育成

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